・中枢神経系悪性リンパ腫に対する治療は、診断確定のための生検術の後、薬物療法が中心となります。
・最初に「寛解導入療法」を行い、その後に「地固め療法」を行う流れとなります。
・中枢神経系悪性リンパ腫は高齢者に好発する腫瘍で、本邦では全国がん登録の報告では発症年齢中央値が71歳、60歳以上の割合が82%となっています。しかし、全身の臓器機能が保たれていれば、積極的な薬物療法が実施可能で、予後が改善すること多いため、適切な治療管理体制の下、治療を行うことが極めて重要です。
(1)メトトレキサート基盤多剤併用療法
・高度腎機能障害や全身状態不良等非対象となる患者を除き、R-MPV療法(リツキシマブ+ 大量MTX + プロカルバジン+ ビンクリスチン)と、その後の地固め大量シタラビン [HD-AraC])(合わせて、R-MPV-A療法)が標準治療となります。
・R-MPV療法:2週間サイクルで5〜8サイクル行います。完全奏効(CR・CRu)が当施設の治療成績からは約70-80%の割合で得られています。部分奏効(PR)も含めると約90%で腫瘍の縮小または消失が得られます。
①当施設の治療成績論文:HD-MTX単独療法とのhistorical control比較の後方視的解析英文論文が2020年にJpn J Clin Oncolにpublishされています(Sasaki N, Kobayashi K, Saito K, Shimizu S, Suzuki K, Lee J, Yamagishi Y, Shibahara J, Takayama N, Shiokawa Y, Nagane M. Consecutive single-institution case series of primary central nervous system lymphoma treated by R-MPV or high-dose methotrexate monotherapy. Jpn J Clin Oncol 50(9):999-1008, 2020. doi: 10.1093/jjco/hyaa073)。
(2)代替寛解導入療法
・R-MPV療法が使用できない患者(腎機能障害やアレルギイー等のため)には、代替レジメンとして、R-DeVIC(リツキシマブ+デキサメタゾン+エトポシド+イフォマイド+カルボプラチン)療法を行うことがあります。
(1)大量シタラビン療法(HD-AraC)
・骨髄抑制が強いため、当施設では80歳までの患者さんに行っています。4週間サイクルで2サイクル通常実施します。
(2)減量全脳照射(23.4 Gy/13回分割)
・R-MPV寛解導入療法後に奏効した患者さんには、放射線治療による地固め療法を行うことがあります。放射線治療は遅発性神経障害や白質脳症の発生リスクが特に高齢者で高く、60歳以上では待機する方針としています。
・60歳未満の場合、23.4 Gyの減量全脳照射を提案しています。
(3)自家末梢血幹細胞移植支援大量化学療法
・近年、欧米を中心に移植適応患者に対して、地固め療法として自家移植による大量化学療法のランダム化比較試験が実施されたことを受け、本邦でもブズルファン+チオテパ(BuTTレジメン)による前処理と自家移植の治療が保険適用可能となったおり、一般的には65歳以下の臓器機能が保たれている良好な状態の患者さんに対して、行われることが増えてきています。当施設でも血液内科及び幹細胞治療センターと共同して対象患者さんに実施しています。
・2020年3月に国内で実施された治験(ONO4059-02)の結果から、第2世代BTK阻害薬のチラブルチニブが再発・難治性腫瘍に対し承認され、再発あるいは難治性の患者さんに対しての有力な治療選択となっています。
・チラブルチニブは経口薬であり、比較的毒性も低いため、特に高齢者が多いリンパ腫においては外来通院でも可能な治療として選択肢となっています。
・初回メトトレキセート基盤療法後、1年以上経過しての再発の場合は、R-MPV療法の再チャレンジが奏効することが多く、病状から入院での点滴治療が可能な場合は選択肢となります。
・薬物療法が実施困難な病状の場合、対症療法として過去非照射の患者には姑息的に全脳照射を行うことがあります。
・2024年9月より、永根医師が研究代表者、佐々木重嘉医師と小林医師が研究事務局を務める医師主導治験をJCOG脳腫瘍グループの多施設共同試験として(JCOG2104)開始した。初発の中枢神経系悪性リンパ腫に対する寛解導入療法±シタラビンによる地固め療法後CR/CRuとなった患者を対象として、維持療法としてチラブルチニブまたはプラセボを対照として投与する、二重盲検ランダム化第II相試験である。
AMED研究班:Japan Clinical Oncology Group (JCOG)脳腫瘍グループで実施している多施設共同臨床試験に代表施設・研究分担施設として実施・参加しています。
①初発中枢神経系悪性リンパ腫に対するHD-MTX/全脳放射線照射 vs. HD-MTX/全脳放射線照射+テモゾロミド→テモゾロミド療法の第III相試験。先進医療B制度を使用。
②本試験の附随研究:JCOG1114CA1の研究代表者(永根)、研究事務局(佐々木)を当施設で担当し、主解析であるMGMT解析を実施。現在、その他の解析準備を進めている。
①初発の中枢神経系悪性リンパ腫に対する非照射で寛解導入地固め療法後完全奏効例に対する維持療法の医師主導治験。
②対象:初発中枢神経系悪性リンパ腫
③デザイン:プラセボ対照ランダム化第II相試験
④研究代表者:永根、研究事務局、佐々木重嘉、小林啓一