脳の中には、「脳室(のうしつ)」と呼ばれる液体のたまる空間があります。ここを流れているのが「脳脊髄液(のうせきずいえき)」です。この液体は、脳や脊髄を守り、不要な老廃物を排出する働きをしています。通常、脳脊髄液は「作られる量」と「吸収される量」がバランスしていますが(一定の圧が保たれている)、この吸収がうまくいかなくなると、液が少しずつ脳内にたまり、脳室が広がってしまう状態になります。それが「水頭症(すいとうしょう)」です。
特発性:はっきりした原因(出血・感染・腫瘍など)がない
正常圧 :脳脊髄液の圧力が一見ふつうに見える(高すぎない)
水頭症 :脳内に水(脳脊髄液)がたまって脳室が拡がる
つまり、「原因がわからないけれど、脳の水がたまってしまっている状態です。しかも圧力はふつうの値に見える」というのがこの病気の特徴です。
「歩きにくい・もの忘れ・排尿のトラブル」の3つが典型的です。
この3つのうち1つでも気になるときは注意が必要です。
• 足が前に出にくく、小刻みな「すり足歩行」になる
• 歩くときにバランスを崩しやすい
• 座ったり立ったりの動作が遅くなる
特徴的なのは、上半身はしっかりしているのに足だけ動きが悪いことです。
• 会話の反応が遅い、ぼんやりしている
• 興味や意欲がなくなる
• 物忘れが増える
アルツハイマー型認知症と似ていますが、手術で改善する可能性があるのが大きな違いです。
• トイレに間に合わない
• 尿が出そうになると我慢できない
• 失禁してしまう
脳の「排尿をコントロールする部分」が圧迫されるために起こります。
• 主に 60歳以上の高齢者
• 男性にも女性にも起こる
• 原因はまだ完全には分かっていませんが、
加齢による脳や血管の変化、脳脊髄液の流れの障害などが関係していると考えられています。
1. 頭部MRIやCT
脳室の拡大(脳の真ん中の水の通り道が広がる)を確認。
2. タップテスト(髄液排出試験)
腰のあたりから少しだけ脳脊髄液を抜いて、そのあと歩行や反応が良くなるかを観察。改善が見られれば手術の効果が期待できます。
「脳の中の余分な水を別の場所に逃がす」手術を行います。これを「シャント手術」といいます。
• 細い管(シャント)を頭の中または腰からお腹の中まで通し、
脳の水を自然に体の中へ流す
• 水の量を自動で調整できるバルブ付きの装置が使われます
手術後、歩行や尿失禁の症状が改善する人が多いです。
(ただし、認知機能の回復は人によって差があります)
当院は認知症専門医がいる水頭症専門外来を備え、脳神経外科ともの忘れセンターが連携して検査・診療にあたる都内でも屈指の医療機関です。精密検査は主にもの忘れセンターで行われ、確定診断が下されると脳神経外科で治療が行われます。
患者さんへ
専門外来受診はかかりつけ医療機関からの診療情報提供書(紹介状)とともに必ず予約が必要です。通院中の医療機関から当院医療連携室に連絡していただき、水頭症専門外来に予約をお取りください。初診は脳神経外科外来となり、その後もの忘れセンターを受診し入院→検査という流れになります。
水頭症のない状態のCT画像
脳室が拡大している水頭症
脳室―腹腔短絡術後、脳室にチューブが入った状態