― 高度技術とチーム力で挑む「最大限安全な摘出」 ―
当院では、悪性脳腫瘍に対する「最大限安全な摘出(Maximal Safe Resection)」を治療の基本理念としています。
脳の深部に発生する悪性腫瘍(膠芽腫など)は、腫瘍の完全摘出が生存期間の延長に直結する一方で、運動・言語などの重要な神経機能を損なうリスクを伴います。
当院では、脳腫瘍の外科学会評議員として国内外で手術教育にも携わる専門医の指導のもと、最先端の手術支援技術と高い熟練度を融合させ、「安全性」と「根治性」の両立を徹底的に追求しています。
当院では、高精細4K・3D外視鏡システムを用いた最先端のデジタル手術を行っています。従来の顕微鏡手術に比べ、より広い視野と自然な立体感が得られ、さらには最新のデジタル技術による蛍光ガイド手術により安全かつ確実な摘出が可能です。
手術チーム全員が同じ高精細映像を共有しながら操作することで、安全性・効率性・教育効果を飛躍的に高めた“次世代型脳神経外科手術”を実現しています。
外視鏡を用いた脳腫瘍手術。術野のモニター、ナビゲーションシステムのモニター、神経モニタリングの画面を並べ、様々な情報を同時に視認しながら手術を行うことができます。
デジタル再構成した蛍光ガイド手術。腫瘍が赤く光っています
当院では、Medtronic社製の最新ステルスナビゲーションシステム(StealthStation S8)を用いて、術前MRI・CT・トラクトグラフィ情報を統合した三次元脳マップを作成しています。これにより、腫瘍の位置・血管走行・神経線維の方向をリアルタイムに確認しながら、100㎛単位の精度で腫瘍に到達・摘出することが可能です。
ナビゲーションガイド下の脳腫瘍手術のためのStealthStation S8(メドトロニック株式会社ホームページより)
微細な穿通枝(レンズ核線条体動脈)の位置をリアルタイムに正確に示しています
術前MRIから得られる拡散テンソル画像(DTI)および最新のCSD解析を用いた高精細トラクトグラフィにより、運動線維・感覚線維・言語関連線維・視覚路などの主要白質線維を立体的に再構築します。
このデータを術中ナビゲーションに統合し、「見えない神経の道筋」を可視化することで、重要な神経機能を温存しながら最大限の腫瘍摘出を行います。
高精細トラクトグラフィによる神経線維描出。視床の膠芽腫の症例で、腫瘍(緑)に近接する錐体路(黄)と感覚路(紫)を描出、3D再構成して手術シミュレーションを行っています。
左前頭葉腫瘍に症例で、腫瘍周囲の錐体路、弓状束、前頭斜走路、下前頭後頭束を描出しています
超高精細画像装置を用いた3D-CTA、高分解能MRAにより、腫瘍周囲の血管を微小血管レベルまで正確に描出します。腫瘍栄養血管や腫瘍を貫通する血管、穿通枝などを3次元的に再構成し、手術計画の精密化に活用しています。
また、これらのデータを術中ナビゲーションに統合し、重要血管を可視化することで血管損傷による脳梗塞などの合併症リスクを最小限に抑え、安全性をさらに高めています。
高精細画像による腫瘍周囲血管の描出。左前頭葉膠芽腫の腫瘍表面を走行する動脈を描出。1本(①)は腫瘍栄養動脈、2本(②, ③)は腫瘍の先を栄養する血管(温存すべき血管)であることが術前に確認できます。
術中画像。術前検討通りに3つに分かれた動脈を認めます。
右島回の神経膠腫再発腫瘍深部の穿通枝(レンズ核線条体動脈)がしっかりと描出されています。
術中画像。術前の予測通りに1mm未満の穿通枝が確認できて、温存することができました。
当院では、悪性脳腫瘍の手術において、5-アミノレブリン酸(5-ALA)を用いた光線力学的診断(Photodynamic Diagnosis: PDD)を積極的に導入しています。手術中に特殊な青色光を照射することで、腫瘍組織が赤く蛍光発光し、正常脳との境界を肉眼的に識別することが可能になります。
この技術により、肉眼では見分けにくい残存腫瘍をリアルタイムで検出でき、摘出率の向上の大きく貢献しています。
さらに、当院では4K・3Dデジタル外視鏡と5-ALA蛍光観察を組み合わせた「高精細蛍光手術」を行っており、微細な蛍光信号まで正確に捉えながら、安全かつ確実な摘出を実現しています。
当院は、日本脳神経外科光線力学学会幹事、日本脳腫瘍の外科学会評議員の監修のもと、国内でもトップレベルの蛍光手術精度を維持しています。
5-ALAによる蛍光ガイド下手術。左側頭葉膠芽腫の術前MRI画像
術中画像。光線力学的診断により腫瘍が鮮明に赤く光り、摘出部位が一目瞭然です
摘出検体でも腫瘍の蛍光が鮮明に確認できます
術後MRI画像
手術中は、運動誘発電位(MEP)や体性感覚誘発電位(SEP)、視覚誘発電位(VEP)等を用いたリアルタイム神経モニタリングを行います。
神経機能の変化を即座に検知し、摘出の範囲や操作を適切に調整することで、術後の麻痺・感覚障害・視野障害などを予防しています。
言語や運動に関わる重要領域の腫瘍では、患者さんにご協力いただきながら、会話や動作を確認しつつ摘出を進めます。
これにより、腫瘍をより多く取り除きながらも、術後の生活の質(QOL)を保つことが可能です。
症状を悪化させることなく摘出が得られた神経膠腫の患者さんの例です。
30代男性、右島回~側頭葉の神経膠腫再発の術前後MRI
B: Aの患者さんの術中画像。穿通枝(レンズ核線条体動脈)を確認しています。C:術後、麻痺などの症状悪化は認めませんでした。
50代男性、左前頭葉膠芽腫の術前後MRI
Dの患者さんは術後麻痺なく、ベースの演奏が可能でした。
70代女性、左側頭葉~島回の膠芽腫の術前後MRI
50代男性、左視床膠芽腫の術前後MRI。 深部局在で摘出困難な腫瘍ですがよく摘出できています
40代女性、右島回の膠芽腫。硬くて摘出に苦労しましたが丁寧に摘出して全摘出ができました。
40代女性、左頭頂葉~脳梁の膠芽腫。深部局在で血流も非常に豊富な腫瘍でしたが、全摘出が得られました。
20代女性、右島回の神経膠腫。症状悪化することなく摘出することができました。
40代男性、右視床膠芽腫の術前後MRI
当院では、日本脳腫瘍学会・日本脳腫瘍の外科学会の指導的立場にある脳神経外科医が中心となり、最新のエビデンスと国際的標準に基づいた手術を実践しています。
手術は常に複数医師で行い、若手医師への教育体制も整備されています。
手術困難症例に対しても、学会や国内外の専門家と情報共有しながら、最適な治療方針を検討します。
悪性脳腫瘍の治療は、「誰が、どこで、どのように手術を行うか」で結果が大きく変わります。
当院は、最先端技術と熟練した技術者集団による「脳腫瘍専門の外科治療チーム」として、患者さんとご家族に寄り添いながら、最高水準の脳腫瘍手術を提供しています。