〜頭蓋内動脈狭窄・閉塞に対するバイパス手術〜
脳は常に大量の血液と酸素を必要としています。
その血流を支えるのが、内頸動脈・中大脳動脈・前大脳動脈などの主要な脳動脈です。
これらの血管が動脈硬化などによって狭くなったり、完全に詰まると、脳の一部で血流が不足します(脳虚血)。さらにこの状態が進行すると一過性脳虚血発作(TIA)や脳梗塞を発症する危険があります。
まずは薬物治療が行われることが多いですが、薬による治療で改善が難しい場合、外科的に新しい血流の道を作る「脳血行再建術(バイパス手術)」が検討されます。
1. 動脈硬化による頭蓋内動脈の狭窄・閉塞
2. もやもや病など、先天的な血管異常
3. 放射線治療後など
このような状態では脳の血流が慢性的に不足し、軽い症状(手足の脱力、しびれ、言葉のもつれ、一時的な視力低下など)が繰り返し現れることがあります。
当院では以下の検査を組み合わせ、どの程度血流が低下しているか・手術が有効か否かを判断します。
1. MRI/MRA検査:脳動脈の狭窄や閉塞の部位・範囲を確認します。
2. 脳血流SPECT検査:脳全体の血流分布を画像化し、どの領域が血流不足かを可視化します。
3. 造影CT・血管撮影:血管の形態や側副血行の発達を詳細に評価します。
頭蓋内動脈の狭窄や閉塞があり、薬による治療(抗血小板薬、危険因子の管理)でも症状が再発する場合、脳血行再建術(バイパス手術)によって新しい血流経路を確保します。
頭皮の浅い部分を走る浅側頭動脈(STA)を、血流を残したまま部分的に確保します。続いて開頭を行い、脳を包む膜である硬膜を切開、脳表を十分に確認し血流が不足している脳の血管(この場合には中大脳動脈:MCA)に直接つなぎます。
これにより、元は頭皮の動脈から頭蓋内へ新しい血流が供給され、虚血症状の改善・脳梗塞の再発予防が期待できます。
手術後は、集中治療室(ICU)で慎重に経過観察を行います。特に神経症状の観察や血圧の管理が重要であり、過度な血圧低下や上昇を避けながら安定した血流を保ちます。
また、画像検査(CT、MRIや脳血流SPECTなど)を行い、過還流現象の有無やバイパスの開存の確認します。その後、状態が安定すれば一般病棟へ移動し、リハビリや再発予防の治療を継続します。
杏林大学病院では、脳神経外科・脳卒中センターが連携し、虚血性脳血管障害に対する包括的な診療体制を整えています。
また、もやもや病や放射線性血管障害など、特殊な病態に対する血行再建術にも対応しています。
脳の血管が慢性的に狭くなっている場合、薬だけでは防ぎきれない脳梗塞のリスクがあります。脳血行再建術は、脳への血流を新たに確保し、将来の脳梗塞を予防するための有効な選択肢のひとつです。当院では詳細な血流評価とチーム医療によって、安全で効果的な治療を提供いたします。