くも膜下出血の発症は命に関わるため速やかな治療が必要です。当院は多摩地区で唯一の高度救急救命センターを有しており、 これまで軽症から最重症までの多くのくも膜下出血の患者さんを受け入れてきました。24時間365日受け入れ体制が整っており、来院と同時に脳神経外科専門医が、患者さんに応じた迅速で適切な対応を開始いたします。
くも膜下出血の治療は、脳動脈瘤(血管のコブ)の止血手術だけでなく、 発症しておよそ2週間は脳梗塞のリスクが高いため集中治療を要します。以降は追加治療を行うことがあり、1ヶ月程度の入院となるのが一般的です。問題なく自宅退院できる方もいますが、すぐの退院が難しい場合にはリハビリ専門病院への転院となります。
くも膜下出血は、くも膜という脳を包んでいる薄い膜の下に出血が生じた状態です。頭部打撲を除くと、85%は脳動脈瘤の破裂が原因と言われています。脳動脈瘤は動脈の一部が膨らみ、血管の壁が弱くなったものであり、その形により血管の二股が風船のように膨らんだタイプ(囊状)と血管自体が膨らんだタイプ(紡錘状)に分けられます。
脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血の頻度は、日本では人口10万人当たり約20人とされています。くも膜下出血の発生率は40歳代から50歳代にかけて増え始めます。くも膜下出血のリスクとしては高血圧、過度の飲酒、喫煙があり、 くも膜下出血の家族歴(家系の中にくも膜下出血を発症した方がいるか)もリスクであるとされています。
脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血の致死率は50%と高く、くも膜下出血がどれくらい良くなるかは、 発症時の重症度によります。くも膜下出血の症状は、突然の激しい頭痛で、悪心や嘔吐を伴うことが多く、昏睡状態となることもあります。
頭部CTで、 写真のような白い出血を確認できれば、くも膜下出血と診断できます(図1) 。CTだけで診断することが難しいケースがあり、 その場合はMRIや腰から細い針を刺して行う診断方法(腰椎穿刺)を併用いたします。
出血の原因となる脳動脈瘤診断にはカテーテル検査(図2)や造影剤を用いたCT検査を行います。
破裂した脳動脈瘤の再破裂は発症初日が3-4%で、以降4週間は1-2%/日とされており、 再破裂予防のための手術が必須となります。 くも膜下出血の診断後には、再出血予防のために痛み止めの使用や、 血圧の管理を行います。
脳動脈瘤の発生した場所、形、大きさを診断した後に、 年齢やくも膜下出血発症前の生活自立度を考慮して開頭手術(開頭クリッピング術)か、カテーテル手術(コイルによる治療)を施行するかを検討します(治療法については未破裂脳動脈瘤もご参照ください)。
脳血管れん縮(脳血管がちぢむこと)とは、くも膜下出血発症後の4-14日目に発生する脳血管の太い動脈が細くなる現象であり、その時期に脳梗塞のリスクが高まります。 くも膜下出血の量が多いと、脳血管れん縮が発生しやすいとされています。 脳血管れん縮は時間が経てば元に戻ります。脳梗塞の予防として、 ファスジルやクラゾセンタンといわれる点滴薬を使用します。また、頭部や腰から体外に出した管(脳槽ドレナージや腰椎ドレナージ)を用いてくも膜下出血の排出を促します。場合により、 脳血管れん縮に対するカテーテル手術を施行することがあります。
くも膜下出血発症から2週間以降の慢性期には正常圧水頭症を発症することがあります(認知症、歩きづらさ、失禁などがその症状です)。水頭症の手術には脳とお腹をカテーテルでつなぐ脳室腹腔シャント術や、腰とお腹をカテーテルでつなぐ腰椎腹腔シャント術を行います。
くも膜下出血のCT
カテーテル検査の際の画像で、動脈瘤(矢印)から動脈(矢頭)が出ています
岡田 啓, 塩川芳昭 最新ガイドラインに基づく神経疾患 診療指針2023-24 くも膜下出血 総合医学社 2023